2007年05月10日

遅れてきた「寅の三題噺」

〜『寅の三題噺』第9回 お題=不二家、筋肉痛、ぬかるみ〜


とある中年の男。
運動不足のために、近頃はブクブク太ってしまい、
情けなく弛んだお腹は、妻にも舌打ちをされる始末。
頭部はM字脱毛、腹部はメタボリックと、ロクな事がない。
この悩みを解消すべく、男は会社の同僚に相談することにした。
そんな休日の夜、とあるレストランにて。


「悪いな新野くん、呼び出したりして」
「いいえ、大丈夫よ駿河くん。ぼくも今夜は予定なかったんよ」
「ちょっとな…相談したいこと、あってな…」
「そんなん、ナンボでも言うて! ぼく、駿河くんのためなら何でも…」

「あ、いや、そんな大した話やあらへんねん。
 俺な、また最近やたらと“腹”が出てきてやな…」
「そうやね、巨人も今年は調子エエみたいやもんねぇ〜」
その“ハラ”と違うっちゅうねん! 俺のお腹や、オ〜ナ〜カ!」
「もう! そんなん解ってるわよ〜運動不足なんと違うの?」
「それや、それや、運動不足や。
 頭では解ってるんやけど、なかなか運動とかもできひん。
 でも腹は減るからメシは食うし、酒も飲む。
 このぬかるみから抜け出せんのや」
「なるほど〜ぼくは食が細いから、痩せていく一方やけどねぇ」


そこに、メイドのような服を着たウェイトレスが注文を聞きにきた。

「え〜と、俺はビール。新野くんは?」
「じゃ、ぼくは紅茶、もらえるかしら?」


話は続く。


「そうやわ、駿河くん。ゴルフでも始めたらいいのと違う?」
「ゴルフなぁ〜ツレの杉本とか長谷川なんかは、ようやっとるなぁ
「ほな、駿河くんも、連れて行ってもろうたら、どう? ぼくも行きたいし
「いやいや、アンタ付いて来んでもええやん
 でもな〜俺ゴルフ下っ手くそやねん。アイツら笑いよるさかいな〜」
「でも、腕っぷしは強いから、当たればデカいでしょう。凄いわぁ〜」
「それがアカンのよ。変にチカラ入ってな…もう腕も筋肉痛や」
「あら、大変。やっぱり何ごともリラックスよぉ〜揺れるハート
「ちょ、ちょ、ちょ…気持ち悪いって!」


そこに、さっきのウェイトレスがビールと紅茶を持ってきた。
駿河がビールを、新野が紅茶を、それぞれの作法でいただく。



「あら、ぼく、ケーキ食べたくなってきたわぁ
「コラ! 人が“痩せたい”言うてんのに、目の前でケーキ食うか?」
「そんなん、駿河くんだって今、ビール飲んでるやないの。もう!」
「…ほな、食べたらええがな。『すんませ〜ん、お姉さん!』」


低いのに何故かよく響く声で駿河が呼ぶと、
三たび同じウェイトレスが二人のテーブルに付いた。


「あのね、ケーキのメニュー…あるぅ?」


ウェイトレスがケーキ用のメニューを差し出すと、新野の目が輝いた。

「あら、すごいやないの。ケーキだけで、こんなに種類があるなんて!
「…そりゃ、まぁ不二家レストランやさかいに…」
「そうなの? 気づかなかったわぁ〜ぼく」
「表にバァーンと“フージーヤ”って書いてあったがな。あの人形も立っとったし
「ああ、あれね。“サトちゃん”
“ペコちゃん”や! 子象になって、どないすんねん」
「解ってるわよ! ちょっとボケてみただけよ。
 …あ、じゃお姉さん、このイチゴのショートと、モンブランと〜」
「えらい、食べるねんなぁ〜」
「このタルトも美味しそうやわ〜、これもちょうだい」
「もう、その辺に…」
「あと〜このティラミスと、このショコラなんとかも…」
コラコラ!今からダイエットしよかって言う、俺の目の前で〜
「あら、ぼく意外と“痩せの大食い”なんよ
「はぁ…ほな好きにしなはれや…」

駿河は脱力し、
その新野の食いっぷりに、思わず舌を巻いた。ペコちゃんのように
そして、新野は、
合計5つのケーキをあっさり平らげ、舌を出した。ペコちゃんのように

駿河は言った。
「その調子で、全部のケーキ、食うてミルキーか!?」(みる気)
新野は答えた。
「いやいや、もう全部ネクターのよ」(食った)


観念した駿河は、参ったと言わんばかりの調子で、新野に頭を下げた。
ペコりとね。



…おあとがよろしいようで。
posted by 天八亭寅次郎 at 16:08| 大阪 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 寅の小噺 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お題拾っていただきサンキューです。この、ケーキの食べ方は自分とダブりました。
お腹は段々ポコちゃんになってきましたね(;´д`)
Posted by きんや部長 at 2007年05月12日 09:45
きんや部長。
>お腹は段々ポコちゃんになってきましたね
うっ…やるな。
今回はかなりオチに苦しみました。
迷った挙げ句、思いついたのを全部言ってみた訳です。
その「苦悩」もお楽しみいただけたらな〜と思いましてね(笑)
Posted by 寅ちゃん at 2007年05月14日 10:40
お題を使っていただいて、ありがとう
ございました。
不二家といえば、ペコちゃん。
あの笑みが子どもの頃から
怖かったのですが、こんなんになるなんて
びっくしです。
Posted by lily at 2007年05月14日 16:42
lilyさま。
すんません…「三題噺」史上、サイテーの出来のような…。
せっかくのお題だったのですが…。

しかし、不二家も再開したものの、
ペコちゃんが舌を出してるばっかりに
「反省の色なし」と評されるのはかわいそう…
って、そんなツッコミ入れてるの、あっしだけでしょうか。

あのペコちゃん人形が、微妙にうつむいていたら、
ネタとして面白いのにな、と不謹慎な事を考えた寅です。
Posted by 寅ちゃん at 2007年05月14日 18:14
お題、使っていただきありがとうございますです。

てか、ワタクシが余計なお題を出したせいで、
もともと創ってはったネタを創り変えてくれはった
のでは?

関西文化に触れる事がほとんどない日常なので、
楽しませてもらいましたよ。
Posted by べちー at 2007年05月24日 23:04
べちー姉さん。
いやいや、大丈夫ですよ。
しかし、あの「ぬかるみ」のテイストを再現しようと頑張ったのですが
新野先生が、後半ただのオカマになってしまったのが残念です。
あとベー師匠的な雰囲気もいまいち…むずかしいなぁ。
Posted by 寅ちゃん at 2007年05月25日 13:50
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